HPVワクチンについて最新の情報がないかなぁとサーチしていて出てきた検索サジェストにびっくり!
『子宮頸がんワクチン アメリカ 禁止』
これだけみたら、『やっぱり子宮頸がんワクチンは問題あるんだ!』『アメリカはもう禁止にしたんだ!』と思ってしまいますよね。アメリカの小児科や細胞診事情に近い環境にいる私すら、『そんなこと聞いてない!うちの息子はもう2回打ち終わったっていうのに今更禁止???』と動揺を隠せず早速検索に出てきたサイトのチェック。
おかしなことに、出てきたのの一つはアイラボのブログ、『アメリカではHPVワクチンは「9歳から12歳まで、男女ともに」を推奨』。私が書いた記事なので良く知っています。アメリカで子宮頸がんワクチンが禁止になったなんて一言も書いていない記事です。その他の記事も、結局はなぜ日本ではHPVワクチンの接種率が低いのか、他の国ではどんな感じなのか、という記事でした。
どれも結構古い記事なので、現状にはあまり関連性のない記事が多くみられました。
でも、子宮頸がんワクチンを検索するとこのようなサジェストが出てきてしまうことで。不必要な不安や間違った認識を与えてしまいますよね。
それなので、今日はみなさんの不安を取り除けるよう、アメリカでの子宮頸がんワクチン(正しくはHPVワクチン)の現状を盛り込みながら、アメリカで子宮頸がんワクチンが禁止になったという事実はないことを書いていこうと思いました。
目次
アメリカで子宮頸がんワクチンは禁止になっていません
日本のHPVワクチン接種率(おそらく女子のみ、年齢は不明)は1.9%。厚労省のHP『HPVワクチンについて知ってください 子宮頸がん予防の最前線』から画像を引用します。
それに比べ、現在のアメリカでのHPVワクチン接種率(13-17歳男女、2021年調べ)は61.7%のようです。アメリカでのヘルスランキングを見られる面白いウエブサイトを見つけたのでシェアしますね。各州での接種率が見られてなかなか面白い!コロナワクチンの接種率の州による違いも似たものがあるのではないかなぁと勝手に思ってみました。
同サイトによると、2016年にはかなり差があった男女の接種率も、2021にはほとんど差がなくなってきていますね。
アメリカでの子宮頸がんワクチンの有効性
厚労省が今年4月17日に改定したばかりの『子宮頸がんと HPV ワクチンに関する正しい理解のために』では、Siegel RLらの文献『Cancer statistics, 2023』によると、以下のようです。画像も同ページより引用しますね。
『米国では、2006 年にアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA) が 2 価と 4 価 HPV ワクチンを承認し、定期接種としては 4 価 HPV ワクチンを男女で推進 し、2015 年には 9 価ワクチンを 9-26 歳男女で承認しています(現在は9価のHPVワクチンのみが 11~12 歳の男女に定期接種)。米国では、これまでの4価HPVワクチンプロ グラムの効果によって、すでに 20~24 歳の浸潤子宮頸がん罹患率は 2005–2012 では 33%減少、2012 年~2019 年で 65%減少していることが示されました』
HPVワクチンの定期接種により、65%の子宮頸がん罹患率が減少しているのは素晴らしい結果だと思います。しかも、この数字は20~24 歳女性に限られているもので、24歳以降に感染、発症した場合の罹患率の減少も含めると、有効性はさらに高いものと思います。
そしてHPVワクチンは子宮頸がんだけでなく子宮頸がんの前の段階の異形成自体も防いでいます。子宮頸がん罹患率の数字だけではみられない子宮頸がんの予防率を含めると、その有効性は90%を超えています。
ちなみに、文章中に『現在は9 価のHPVワクチンのみが 11~12 歳の男女に定期接種』とありますが、実際のCDCの規定では接種は9歳から開始することができ26歳まで接種可能です。ワクチンの種類は9価のHPVワクチンのみです。
そしてアメリカでは最初から男女共に対象だったのに、なぜ日本は女子のみ対象で開始したのでしょうね?
子宮頸がんワクチン、アメリカで禁止???まとめ
ということで、アメリカで子宮頸がんワクチン、HPVワクチンが禁止になったという事実はありません。現時点でのアメリカの13−17歳の男女のHPVワクチン接種率は61.7%。その他の年齢層を含めるともっと高くなります。うちの息子は12歳ですが9価のHPVワクチン2回接種完了していますがこの数字には含まれていないことになりますよね。
ちなみに今まで日本はHPVワクチンは3回接種でしたが、今回日本で認可された9価のHPVワクチン『シルガード9』の添付書類(2023年3月改定)、さらに上記の厚労省の文書『子宮頸がんと HPV ワクチンに関する正しい理解のために』によると、『9歳以上15歳未満の女性は、初回接種から6~12ヵ月の間隔を置 いた合計2回の接種とすることができる。』となったようですね。
HPVワクチンの接種を受ける子供の負担が減ってよかったよかった。息子曰く、HPVワクチンは今までで一番痛いワクチンだそうです。
なぜ2回の接種でいいのか、についてはアイラボのこちらのブログ、『HPVワクチン、アメリカの今』に説明してあるので、よかったら読んでみてくださいね。
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記事監修
もかちゃん
臨床検査技師、細胞検査士、国際細胞検査士
国際細胞検査士の資格を活かし、日本とアメリカにて検査士として長年勤務。
海外の事情も知るからこそ出来る、日本とアメリカの子宮頸がんや性病に関する知識・医療体制の違いや性教育の違いについてなど、幅広く情報を発信しています。