ベセスダシステム
子宮頸がん検査には、「ベセスダシステム」という細胞診断と治療基準のガイドラインがあります。これは、世界共通のガイドラインで、どこの国でも臨床医が迷うことなく同じ基準の診断と治療ができるようにという目的で作られました。
医療従事者に向けて作られたので特別で難しい用語ですが、このまま検査結果として検査を受けた皆さんにも伝えられます。
用語解説をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
*検査結果についてのご質問は、アイラボまでご連絡ください(042-652-0750)。検査技師が責任を持ってご説明いたします。
・お電話の際には、検査結果の用紙をご用意願います。
・御本人確認のために検査受付番号、お名前等を確認させていただきますことをご了承ください。
*ベセスダシステムは「上皮内病変」に関する診断のみで使われるので、「上皮」におこらない子宮筋腫や子宮内膜症などのその他の子宮の疾患に関してはベセスダ診断対象にはなっていません。
陰性:NILM(ニルム)
NILMはNegative for Intraepithelial Lesion or Malignancy の頭文字をとったもので、「上皮内病変もしくは悪性がありません」と言う意味です。
NILMは、異形成を含めた子宮頸がんに心配な細胞は見られませんと言う意味です。
ただし子宮頸がんの心配はないけれど、カンジダやトリコモナス、細菌性膣症、萎縮性膣炎、膣炎などの変化がある場合も、NILMになります。
ASC-US(アスカス)
ASC-USはAtypical Squamous Cells of Undetermined Significance の頭文字をとったもので、「意義不明な異型扁平上皮細胞」と言う意味です。
正常とは言い切れない異型細胞が見られているけれど、それがHPV感染による変化なのか、その他の炎症性変化(カンジダや膣炎などにより細胞が反応している状態)なのか、区別することができない細胞が見られるときに、ASC-USが使われます。
細胞だけではHPVの感染があるかどうか確定できないので、ハイリスクHPVの遺伝子検査をして確認をするため、検診結果では「要精密検査」や「要医療機関受診」という区分になります。
でも、HPVの感染があるのかないのかをはっきりさせるためなので、「がん」には程遠い状態です。不安にならずにHPVの遺伝子検査を受けて感染の有無をはっきりさせましょう。
また、「ASC-USで精密検査を受けに行ったら何もないと言われた。診断が間違っていたのでは?」と言われる方が多くいます。これは診断ミスなのではなく、複数の理由が考えられますが、以下の2つの理由がほとんどです。
- 最初の検査から精密検査までの間に、免疫力によってHPVが排除されて自然治癒したために、ASC-USと診断された異型細胞がなくなった。
- とても少ない量のASC-USの細胞は子宮頸部の表面的にだけある場合が多いので、最初の採取の際にすべて擦れて取れてしまった。
ASC-USで再検査になった場合は「6ヶ月後に再検査」など再受診の目安の時期を言われる場合があります。ASC-USと診断されてもそれ以上の病変が潜んでいることも否定できませんので、指示のあった再受診の時期を守って必ず再検査を受けましょう。
LSIL(ローシル)
LSILはLow-grade Squamous Intraepithelial Lesion の頭文字をとったもので、「軽度の扁平上皮病変が見られます」と言う意味です。軽度異形成、CIN1とも言われます。
ハイリスクHPVに感染していて、その細胞変化の度合いが軽度な状態です。
ハイリスクのHPVに感染しているので、経過観察をしていくことはとても重要ですが、まだ子宮頸がんから程遠い段階で、体の免疫力でまだ大部分のHPVが自然に排除されていきます。
80〜90%の女性は一生のうちに一度はHPVに感染すると言われている時代です。HPVに感染しているからといって必ずがんになるわけでもありませんし、決して恥ずかしいことでもありません。
ただし医師による経過観察が必要なため、検診結果では「要精密検査」や「要医療機関受診」という区分になります。
LSIL(ローシル)と診断されたら、医師の指示通りに経過観察の検査を受けましょう。
ASC-H(アスクエイチ)
ASC-HはAtypical Squamous Cells, cannot exclude a High grade squamous intraepithelial lesionの頭文字をとったもので、「高度異形成を否定できない異型扁平上皮細胞」と言う意味です。
ハイリスクHPVの感染が見られ、次のHSILというがんの一歩手前、もしくは初期のがんを否定できない細胞が見られるけどはっきりと診断できる十分な細胞が見られない時にASC-Hが使われます。
ASC-Hになると、がん寄りの診断になってきます。医師による経過観察が必要なため、検診結果では「要精密検査」や「要医療機関受診」という区分になります。
HSIL(ハイシル)
HSILはHigh Grade Squamous Intraepithelial Lesionの頭文字をとったもので「高度の扁平上皮病変がみられます」と言う意味です。
細胞の変化が進み、非浸潤性か浸潤性のがんの細胞、もしくはなりかけの細胞(病変)が確認された状態です。
医師による検査と治療が必要なため、検診結果では「要精密検査」や「要医療機関受診」という区分になります。
HSILの診断がついた場合、組織検査が必要となります。この組織検査を行う事で浸潤性がんの早期発見にもつながります。
組織検査の方法として、子宮の入り口を円錐状に切り取り、現状確認されている疑わしき細胞を切除するという円錐切除術という手術を行います。
この手術後、病変部位の取り残しがなければ追加の治療は通常不要になります。
しかし、手術後の病理診断によってさらに深い部分に病変組織が見られたり、がんの浸潤が発見された場合には追加治療が必要となります。
円錐切除術は子宮の一部を切除する事になるので、今後妊娠が出来ないと不安に思われる方もいらっしゃいますが、この手術は将来赤ちゃんができる部分には傷ができないので、基本的にまだ妊娠することは可能です。
HSILはLSIL寄りのまだがんから少し離れているものから、すでにがん細胞が表面的に出来始めている状態まで広い範囲が含まれており、とても重要な診断です。HSILといわれたら、早めに受診しましょう。
SCC(エスシーシー)
SCCはSquamous Cell Carcinomaの頭文字をとったもので、「扁平上皮癌」と言う意味です。
浸潤性がんが発見されたという事になります。
すぐに受診し、治療を始めましょう。
AGC(エージーシー)
AGCはAtypical Glandular Cellsの頭文字をとったもので、「異型腺細胞」と言う意味です。
子宮頸がんの10〜20%に起こる腺細胞の異常で、子宮頸部の奥の方の細胞がHPV感染を含め何らかの反応もしくは異常を示しているときに使います。
また、閉経後の女性の子宮頚部細胞診に子宮体部の細胞が見られた場合もAGCが使われます。
AGCが出た場合は、子宮体がん検診の対象になってきます。