TBSのコウノドリ、私大好きなんです。毎週楽しみに見ています!!と言いたいところですが、なかなかそうもいかず、昨日やっと録画しておいた第2話を見ることができました。
妊婦さんが子宮頸がんになってしまうお話。すごく悲しくて、切なくて、ハラハラでしたよね。どうしてこんなにも幸せな時に、こんなにも悲しいニュースが。。。と、怖くなってしまいますよね。
すごくいいトピックであったこと、大人気のドラマが子宮頸がんについて取り上げてくれたこと、私はすごく嬉しいのです。なので、今日はコウノドリ第2話について語ってしまおうかと思います。
目次
あらすじ(まだ見てない人は、ネタバレ注意)
妊娠19週の妊婦さん、久保佐和子さんの子宮頸がんの検査。妊娠自体は順調であったにもかかわらず、まさかのがん宣告。進行を調べるために子宮の入り口を切除する検査、円錐切除でがんが思っていたよりも子宮の中までも広がっていたというさらに辛い結果。なるべく早く赤ちゃんを取り出して、子宮の全摘出をしないとお母さんのがんが手遅れになってしまうかもしれないという、命の選択に迫られる。
子宮頸部腺がん
今回取り上げられた子宮頸部腺がんは、子宮頸部(子宮の入り口)のどちらかというと内側にできるがんです。子宮は膣の方から扁平上皮細胞という皮膚と同じような組織、そして腺細胞という粘液を出したりする細胞、そして赤ちゃんのできる子宮の一番メインの部分は子宮内膜細胞という細胞でできていて、3つの違った表面の組織でできています。
今回の、子宮頸部腺がんはこの腺細胞のがんです。
子宮頸部腺がんとワクチン
ありましたねー、四宮先生と小松さんのワクチンに対する思いの違い。本当にあれは現実的な問題で、あのような討論は実際学会に行ってもよく聞こえて来ます。本当にワクチンによる副反応なのか、それとも、偶然なのか。その判断は本当に難しいところですね。
ちょっと残念だったのが、ワクチンには触れたものの、なんのワクチンであるか、に触れなかったことです。おそらくHPVのワクチンについてだと思いましたが、それだったなら、ちょっと惜しい。子宮頸部腺がんではなく、子宮頸部扁平上皮がんの方がふさわしかったのではないかと思います。
なぜかというと、四宮先生と小松さんが討論していたワクチン、HPVのことであればこれは子宮頸部の扁平上皮癌を予防するものであって、子宮頸部腺がんはおよそ70%はHPVの影響があるとは言われているものの、残りの30%くらいは、HPV由来ではない癌だからです。
ワクチンは触れたのに、検診は触れられなかったのが残念
子宮頸がんについてこのように人気ドラマで取り上げられたことは、すごくありがたかったし、子宮頸がんに対する認知度を上げるにはもってこいのチャンスです。でも、本当に残念だったのは、せっかく子宮頸がんのトピックで、せっかくワクチンにも触れたのに、子宮頸がんの定期検診を受けていれば、、、ということに一切触れなかったことです。本当に残念。
四宮先生と小松さんはどうして久保佐和子さんがこんなに辛い思いをしなくてはいけないのか、それぞれ苦しみました。ワクチンという手段を取らなかったことを問題視する四宮先生、副反応などを考えるとワクチンはすべての患者が安心してできるものではないという小松さん。私はそこに、鴻鳥先生にも参戦して欲しかったです。
「久保佐和子さんが、子宮頸がんの定期検診を受けていたら、妊娠する前に見つけられていたかもしれない。」
この一言でいい、もし鴻鳥先生が言ってくれたのなら、私には大満足のエピソードでした。
ちなみに、妊娠する前に見つけられていたら、もしかしたら今回久保佐和子さんが妊娠中でも受けられた円錐切除という子宮の一部を切る手術で済んでいたかもしれません。それは子宮頸部扁平上皮癌でも同じことです。特に前癌病変の異形成という段階では浸潤もないし、この円錐切除でがんになりそうな部分だけを切り取ってしまえば、もう終わりなのです。抗がん剤もないのです。だって、まだがんになっていないから。
子宮内部にがんが広がっていない限り、子宮も大抵は取っておけるので妊娠もできます。その円錐切除された部分の子宮は再生されるとも言われているので、今後何の支障も残らないのです。検診を受けずに子宮を失い、がんの治療を受けること、それか年に一度、子宮頸部細胞診検査を受けること、あなたはどちらを選びますか?
定期検診を受けない:子宮頸がんはマザーキラー
アイラボがいつも言っているマザーキラーとは、まさにこのことなのです。お母さんとなる年代に多く発症し、定期検診を受ける習慣のない日本人女性は、妊娠して初めて自分ががんという病気を抱えていると知ることも少なくないのです。
子宮頸がんの原因となるHPVはセックスによって感染します。HPV感染した細胞は顕微鏡で見てわかるのです。がんでもない、前癌でもない、ウイルス感染の時点で、細胞診検査でその感染をちゃんと目視できるのです。同じ検体でHPVの遺伝子検査だってすることもできます。
10代後半から20代前半にセックスをするようになり、妊娠のためやっと産婦人科を受診するのは30歳。(厚労省平成26年度初産平均年齢のデータは30.1歳)まだ何もわからない20代前半にもしHPVに感染してしまっていたら、10年も放置してしまうことになるのです。それがとても怖いことなのです。
セックスをするようになったら、子宮頸がん検査をする、という他国では当たり前のことが日本ではできていないのです。
久保佐和子さんが、もし定期検診を受けていたら、、、もしHPVによるものであったなら、がんになる5−7年前にもしかしたらウイルスの感染を見つけられたかもしれない。
もしHPVに関係ない腺がんだったとしても、毎年検査していたら、その変化は見つけられたのではないでしょうか。
今、子宮頸がんを起こすハイリスク型のHPVの型はどんどん増え続けています。ワクチンを打ったところで、そのワクチンの中に含まれていないハイリスク型のHPVに持続感染してしまったら?残念ながら、ワクチンを打ったからと安心して検査をしないでいると、ウイルスの感染も、がんへの進行も見逃してしまうことになります。
だからこそ、「ワクチンをしていようがいまいが、定期的に検診を受けることは大事なんだ」、と鴻鳥先生がいうことのインパクトが、子宮頸がん検診受診率50%を切っている日本では本当に必要だったのだと思います。
TBSコウノドリ、子宮頸がんを取り上げてくれてありがとう!
色々意見を言いましたが、それでも私はこの第2話、本当に嬉しいエピソードでした。子宮頸がんについて、一人でも多く気に留めてもらえたらいいなと思います。知ってもらうこと、それが大事だったのです。だから、素晴らしいエピソードをありがとうございました!
医療従事者内でも、ワクチンや検査について色々な意見はもちろんあります。でも、きっと誰もが同じ目標に向かっていることには間違えはないと思います。
子宮頸がんを撲滅したい
だから、医者や医療従事者だけでなく、みんなそれぞれがもっと子宮頸がんのことを知り、ワクチンや検査の意味を知り、自分で選択していってほしいと思います。そのために一番必要なことは、知ってもらうこと。
今回のエピソードで、「うわ、妊娠してから癌なんて辛すぎる」と何人の女性が思ったでしょう。いや、女性だけではないと思います。大切なパートナーを持つ男性も、きっと自分達の身には起こってほしくない、と思ったのではないでしょうか。
子宮頸がん撲滅は女性だけのチャレンジではありません。男性もHPV感染を検査できる時代です。まずは自分を知ること。それが子宮頸がん撲滅へのいちばんの近道なのです。
病院でもいい、郵送検査でもいい。一年に一回は子宮頸がんの検査をしましょう。そして、男性も、一度は自分がHPV感染していなことを確認してください。大好きな彼女、奥さんにHPVを移してしまうのは、あなたしかいないのです。
おすすめの検査キット
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自宅でご自身で採取出来、病院に行けなくても安心して検査が受けられます。
記事監修
もかちゃん
臨床検査技師、細胞検査士、国際細胞検査士
国際細胞検査士の資格を活かし、日本とアメリカにて検査士として長年勤務。
海外の事情も知るからこそ出来る、日本とアメリカの子宮頸がんや性病に関する知識・医療体制の違いや性教育の違いについてなど、幅広く情報を発信しています。