B型肝炎について
B型肝炎ウイルスHepatitis B virus (HBV)は、血液や体液を介してヒトからヒトに感染して肝炎を起こします。肝炎が持続すると慢性肝炎となり、さらに肝硬変から肝がんへと進むことがあります。
免疫機能が発達した成人な場合は一過性(一時的な)の感染ですみますが、免疫機能が低下した状態の時に感染すると高い頻度で持続感染(キャリア化)になります。
これまでの多くの研究の結果、B型肝炎はHBVが持続感染しているキャリアとの性行為によって感染すると考えられています。
感染によって症状が出る人は30%程で、半数以上の人は症状が出ないまま自然に治ります。
B型肝炎ウイルスHepatitis B virus>(HBV)というウイルスがB型肝炎の正体。
血液や体液が小さな傷口などから侵入することでうつる(性行為は単に粘膜と粘膜、粘膜と皮膚がふれるだけでなく“こずる”が加わりますので、目には見えない小さな傷がつきやすいので要注意)
口と口、口と性器、性器と性器、どの接触でもうつる可能性がある
輸血や医療従事者の針刺し事故など
B型肝炎の症状
倦怠感(けんたいかん)、だるさ
食欲不振
関節痛
褐色の尿
微熱
黄疸(おうだん)
B型肝炎の検査
検査を受けるタイミング
心配な行為があってから4週間から6週間
検査方法
血清学的検査
IgM型HBc抗体が陽性であることが診断の決め手になります。
B型肝炎ウイルスのうち、ウイルスの表面を覆う蛋白の中で最も多いのをHepatitis B surface(HBs 抗原)と言います。中心部分(コア)を構成する蛋白をHepatitis B core(HBc 抗原)と言いますが、その他にコアの一部を構成する蛋白としてHBe抗原があります。これら3種の蛋白に対してそれぞれHBs抗体、HBc抗体、HBe抗体が作られます。
以下の5種の蛋白を調べることによって、B型肝炎の病態(その時々の状態)を知ることができます。
HBs抗原の検査:(+)であれば、肝細胞の中でHBVが増え、血液や体液にも存在します。感染の危険性があり、肝炎を発症することもあります。
HBs抗体の検査:(+)であれば、すでにHBVに感染したことがあることを意味し、HBVの感染を防げます。B型肝炎ワクチンの接種も同じ効果が得られます。
HBc抗体の検査:慢性B型肝炎や無症候性キャリアでは高い測定値を示します。
※急性肝炎の診断にはIgM型HBc抗体の測定が最良の検査です。
HBe抗原の検査:(+)は肝細胞の中でHBVが激しく増えていることを意味します。
HBe抗体の検査:(+)であれば感染力は低く、予後が良好である指標になります。
リアルタイムPCR法
ウイルスそのものを測定する
B型肝炎の治療法
肝庇護療法(かんひごりょうほう)
肝庇護療法とは、インターフェロンなどの抗ウイルス剤でHBVを排除する方法ではなく、HBVを排除できなくても炎症を抑え、肝細胞の障害をできるだけ低くする(GPTの値を低く保つ)ことで病態の進行を防ぐ治療法です。
抗ウイルス療法
B型慢性肝炎治療の最終目標は、肝硬変に進ませず、肝がんに進展するのを防ぐということです。
そのためには先ずHBVが増えるのを抑え、肝炎を鎮静化させることが重要になります。
インターフェロン(INF)はウイルスの増殖を抑え、免疫力を高める働きがあるため、HBV DNAを減少させ、肝機能検査値GPT(ALT)を正常値にもどし、HBe抗原(-)・HBe抗体(+)「セロコンバージョン」にすることが目的になります。
核酸アナログ治療
この治療はまさにウイルスそのものの増殖を阻害するものです。
成人にHBVが感染した時は一過性の感染で、多くの症例(80%程)は症状を示さない不顕性感染(ふけんせいかんせん)で終わります。
20%程が急性肝炎の症状を示しますが、特別な治療をしなくても肝庇護療法(かんひごりょうほう)で肝臓の炎症を抑え、肝硬変や肝がんへ進むのを予防することで多くは完治します。
まれに劇症化することがありますので慎重に経過観察する必要があります。