子宮頸がん検査をして「要精密検査」という結果が出るとびっくりしてしまいますよね。私、子宮頸がんなの?って。
子宮頸がんの検査は他のがん検査と少し違って、がんになる前のウイルス感染の段階で見つけられるからこそ、とくにASC-USという診断では「精密検査をしたらなんでもないと言われた」、ということもよくある話なのです。でも、それは誰も診断間違えをしたのではなく、大げさな診断だったわけでもなく、適切な診断だったのです。
でも、その理由はとても専門的でなかなか理解しにくいことなのです。
みなさんが安心して検査結果を理解できるように、そしてなぜそんなことになってしまうかについて今日は説明したいと思います。
目次
ASC-USとはなに?
ASC-USとは「由来のよくわからない異型扁平上皮細胞」ということで、細胞診として診断する側としてはHPV感染の可能性が高い細胞だけれど、確実にHPV感染と診断できる細胞ではないときにこの診断を使います。
この診断になった場合、子宮頸がんの原因となるハイリスク型HPVの感染がないかの検査をすることが一般的です。再検査は3ヶ月から6ヶ月の間にされるのが一般的です。
なんでASC-USの細胞が再検査で見つからないの?
HPV感染は性行為のある女性のうち80%は一生のうちに一度は感染すると言われています。しかし、感染した人のうち90%くらいは免疫力により、自然に知らないうちに排除されていると言われています。
それなので、検査を受けた時にはまだHPVが細胞に影響を少し与えていたけれど、6ヶ月後に再検査した時には免疫力によってHPVが排除されていたので何も見つからなかった、ということはとてもよくあることです。
また、細胞の変化はほとんどの場合、理由があって変化します。炎症による変化、感染症による変化、HPVによる変化。それぞれ特徴的なものは一目で区別がつきます。しかし、時には似たように見えることもあり、HPV感染によるものか、他の理由によるものなのか区別をすることが難しい場合もあります。
そのような時にもHPV感染が完全に否定できない異形扁平上皮細胞がみられたら、ASC-USという診断になります。それなので、半年後に再検査をした時、もしくは他の感染症などがみつかり、治療した後には異型細胞はもう見られなくなることもあります。
免疫力で排除されてしまうものなら「精密検査」にしなくてもいいんじゃない?
確かにそう思いますよね。でも大事なことは、免疫力で排除することのできなかった10%の女性を子宮頸がんから守ることなのです。それは、再検査を重ねて、しっかりと排除されたことを確認していくことによって、悪いタイプのHPVが居続けない(持続感染していない)ことを確認することが、ASC-USの段階で再検査をしていく理由だからです。
おおげさだ、なんて思わないでください。もしあなたが、持続感染をしてしまい、子宮頸がんへの道を進んでしまうその10%の女性だとしたら、おおげさだ、とか、無駄な再検査、とは思わないと思います。
免疫力で排除されなかったらがんになるの?
ASC-USの段階を過ぎてもHPV感染が続き、異形成へと進んでいってもまだまだ免疫力で排除される可能性は十分にあります。高度異形成、上皮内癌になるまでは手術などの処置はなく、細胞診やコルコスコピー、HPV検査、組織診断などでのフォローアップが続いていく中で、異型細胞が自然と消えて行くことはまだまだあります。
大事なことは、しっかりとフォローアップを続けてドロップアウトしないこと。
「もう大丈夫」と医師に言ってもらえるまでは、必ずフォローアップに行きましょう。そして、もう大丈夫と言われても、一年に一回はちゃんと検診を受けましょう。
子宮頸がん検査:精密検査したら何もないってどういうこと?まとめ
子宮頸がんの検査結果がよくわからない不安、そして、再検査をしたら何もないと言われて生じるさらなる不安とイライライ。検査しても安心できないのでは検査した意味がないですよね。
HPVは免疫力によって排除されることがとても多いので、再検査までの間に自然に治ってしまったということもよくあることをご理解いただけましたでしょうか?
でも、それでも再検査が必要な理由は10%くらいの人が、そこからがんへの道を進み始めてしまうこと。そして、自分がその一人でないということは、フォローアップをしていかないと確信することはできないのです。
だから、ASC-USというとても早期の段階から精密検査がはじまっているのですね。
診断ミスでも大げさな診断でもないことを、ご理解いただけたでしょうか?
検査を受けても不安が取り除けなかったら、すぐかかりつけの婦人科医に相談しましょうね。安心するまで説明してくれるはずですよ。
そして、免疫力で子宮頸がんの原因になるかもしれないHPVを排除できる90%の女性側に入れるように、健康な体づくりに心がけましょう。
免疫力のアップには十分な睡眠と休養、バランスのとれた食生活と適度な運動、そしてストレスマネージメント。仕事や子育て、家事に追われてなかなか難しいことだとは思いますが、できるだけ健康な免疫力を保つ体づくりに心がけてほしいと思います。
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記事監修
もかちゃん
臨床検査技師、細胞検査士、国際細胞検査士
国際細胞検査士の資格を活かし、日本とアメリカにて検査士として長年勤務。
海外の事情も知るからこそ出来る、日本とアメリカの子宮頸がんや性病に関する知識・医療体制の違いや性教育の違いについてなど、幅広く情報を発信しています。