検査士ダイヤリー

クラミジアの星雲状封入体発見まで(1)

BFA7BDA4C0B520img001 写真左端の大きな細胞がクラミジアに感染し

た細胞です。グリーンに染まる細胞質の中に、

青色の4つの島状に見えるのが星雲状封入体

 です。クラミジアが増えているところですが、い

ずれは一つに融合してしまいます。

細胞診でクラミジアの封入体を初めて明らかに

しました。

そんな昔を思い出して。研究の素晴らしさや、い

ろいろな人との出会いをご紹介いたします。

(1)ある論文との出会い

“Cytologic investigations in chlamydial infection” Acta Cytol.,23:315-320,1979.

Dr.Gupta先生の論文です。

 

 Gupta 先生は、ペンシルバニア大学病院の病理医です。

 論文の主旨は、子宮頸がん検査のための細胞診検査で、クラミジアに感染した細胞の中にCoccoid body(球菌様小体)と名づけた封入体が出現するというものです。当時の私は、子宮頸がん検査に使われる細胞診は、がんの診断だけでなく、感染症の診断法として優れた方法であると評価していましたので、クラミジアまで診断できるというこの論文に目は釘付になりました。

 

 早速、Gupta先生が論文に掲載した写真と同じCoccoid bodyが見られる細胞を探し始めたのです。その細胞は意外と速く見つかりました。問題は、そのCoccoid body の中にクラミジアの存在を確認することです。免疫組織化学という方法は、抗原抗体反応を利用してクラミジアなどの微生物(抗原)を確認することが可能な方法ですが、Gupta先生は、蛍光抗体法を用いました。

 

 この数年前、コロラド大学中根教授のもとで酵素抗体法の開発に取り組んでいた日本大学医学部病理学教室の川生 明助教授が日本に帰っておりました。1980年、私は川生 明助教授のもとで、細胞診における酵素抗体法応用に関する基礎的研究を行っておりました。そして、細胞診標本にも酵素抗体法が応用できるという論文を日本臨床細胞学会誌に投稿しました。

 

 Gupta先生の業績を、酵素抗体法という形態学と免疫学を同時に観察できる方法で追試することができたのです。つまり、細胞診で観察したCoccoid bodyを有する細胞を脱色した後、免疫反応を行い、酵素抗体法で一つ一つの細胞をチェックしていきました。

 

当時、クラミジアに対する抗体は、デンカ生研という会社から市販されていましたが、Gupta先生が言う 封入体は全く染まる気配がありませんでした。

仕方なく、脱色した細胞にPAS反応を施してみると、これがバッチリ陽性なのですクラミジアの封入体もPAS反応で陽性ですが、ジアスターゼ消化後も強い反応が残っていたので…これはもしかして? 粘液ではないか?

 

 その年、カナダのモントリオールで国際細胞学会が開催されるので、まだ結論は出ていないが、Gupta先生が言うCoccoid bodyは酵素抗体法で陰性(抗体そのものに自信がなかったが?)でPAS陽性ですので、粘液胞ではないのか?との抄録を出しました。その後もCoccoid bodyを探す日々が続き、その都度酵素抗体法で確認しましたが、陰性という結果が続いていました。

 

 そんなある日、ミドリ十字という製薬会社の営業担当の方から電話を頂きました。アメリカのイムロックという会社から、抗クラミジアマウスモノクローン抗体の試供品が手に入り、その一本を提供して頂けるとの内容でした。私がクラミジアの研究をしていることを知っての計らいと思われ、心より感謝を申し上げ頂くことになりました。しかし、その抗体を使っても、Coccoid body は陰性の山を築くばかりでした。

 

 

 今度の日曜日にカナダに向けて出発することになっていた4日前の木曜日。いつものように子宮頸がん

用の検体を観察していました。・・・・・えっ?・・・これって何?

C0B1B1C0BEF5A3B1

 これは、今まで見たのと様相が違うぞ!

もやもやした中に黒い小さな顆粒が見える。

しかも、空胞の周辺部分に黒い顆粒が多い。

この様な構造は初めてだぞ!

早速、イムロック社製のモノクローン抗体で染色してみると!

  

  当時の実物写真とは異なります。

 

 

 当時は珍しく、スライド写真の現像機を持っていました。

普通に、写真屋さんにお願いして現像すると、1週間程化かてしまうのですが、1時間後には、学会の発表にも耐えられることを確認し、カバーガラスをはがすためキシロールに漬けて帰宅しました。

翌日(金曜日)ミドリ十字さんから頂いたイムロック社製のモノクローン抗体で染色してみると、

C0B1B1C0BEF5このように、

やっと、クラミジアの封入体に出会えたのです。

  その日から、発表原稿を書き換え、モントリオールではこれがクラミジアの封入体です。

そして、星雲状封入体Nebular inclusionと名付けました。

と発表することができました。

ちなみに、その時の座長は、Dr.Gupta先生でした。

 

その時以来、Gupta先生は、私に会うと、

Oh. Dr Chlamydia Shiina と言うようになりました

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